言葉が先にありました。
まだ場所もなく、
カフェコスモスという名前だけがあったころに、
いくつかの言葉が生まれました。
その言葉に導かれるように、場所ができ、
人が集まり、時間が重なって、
気づけば15年になりました。
15年、同じ言葉を掲げ続けてきたというより、
同じ言葉に、何度も出会い直してきた。
ここには、カフェコスモスが大切にしてきた
三つの言葉を置いておきます。
2010
やさしさの解放
人は誰でもやさしさを持っていて、
それを解き放ちたいと思っている。
――2010年6月、まだ場所のなかったころのブログより
カフェコスモスが、
まだ私の頭の中にしかなかったころ。
「やさしさの解放」という言葉が浮かびました。
何かを思いついたというより、
ずっと自分の中にあったものを
見つけたような感覚だったのかもしれません。
人の中には、もともとやさしさがある。
それなのに、傷ついたり、怖くなったり、
頑張りすぎたり、自分を守ろうとしたりするうちに、
いつの間にか、それを自由に表せなくなる。
安心して、やさしさを解き放てる場所をつくりたい。
そこから、カフェコスモスは始まりました。
2014年ごろ、
「やさしさの解放」は
“自分に向けるやさしさ”へと深まっていきました。
自分の感情に素直に向き合うこと。
自分らしくあり続けること。
自分にやさしさを注ぐこと。
自分を許すこと。
やさしさは、誰かに向けるものだけではなかった。
まず、自分に向けることから始まるのだと
気づいていきました。
そして、15年経った今、
また別の角度から、この言葉を見ています。
私は、やさしさを解放しようとしてきたのだろうか。
それとも、ここには最初から
やさしさが自然に現れてくる何かがあって、
私はずっと、それを見つめてきたのだろうか。
人が人を変えようとしなくても、
その人の中にあるものが、自然に動き出す。
カフェコスモスという空間の中にある
「やさしさを解放する構造」を、
私は今、あらためて探りはじめています。

2011
自発的しあわせな社会
カフェコスモスをオープンして3か月ほど経ったころ、
ふと、ひとつの円陣が浮かびました。
人が手を取り合い、
互いに同じだけの力で引き合って
きれいな円をつくっている。
けれど、その円は、
誰かひとりがバランスを崩せば
一緒に崩れてしまいます。
私の中に浮かんだカフェコスモスの円陣は、
少し違っていました。
一人ひとりが、自分の足で地面に立っている。
力は、誰かを引っぱるためではなく、
自分の足元に使う。
そして、隣の人の手にそっと触れ、
引き合うことなく、ただ結び合う。
誰かが離れても、
誰かの力が弱くなっても、
その人も、ほかの人も、倒れない。
一人ひとりが、その人のままで立っている。
そのうえで、誰かとつながっている。
そんな円陣でした。
私はこのとき、
「世界中の人々が、自発的に幸せになれる社会」
という言葉を書いています。
幸せにしてもらうのでもなく、
誰かを幸せにしなければならないのでもなく。
一人ひとりが、自分の足で立ち、
自分の中から、しあわせになっていく。
そして、その人がその人であるまま、
誰かとつながっていく。
この円陣の妄想は、
そのままカフェコスモスの理念になりました。
私たちは、自己の持つ“やさしさ”に気づき、
自分を愛し、他人を応援し、
世界中の誰もが自己表現できる
心豊かな社会を創造します。
――カフェコスモスの理念
あのころ、円陣として見えていたものを、
今の私は「場」や「器」として
見つめているように思います。
誰かを育てようとするのではなく、
人が自然に育っていくための器を整える。
その人の中にあるものが、
その人の速度で、動きはじめる。
カフェコスモスは、
そんなことが起きる場所でありたいと
思ってきたのかもしれません。
そして、これから
やさしさ基準の世の中へ
「あの人は、やさしいね」
それが、最高の褒め言葉になるような世界を
ずっと思い描いてきました。
けれど、やさしさは、
ただ親切にすることでも、
いつも笑顔でいることでもありません。
自分を失って、誰かに合わせることでもない。
自分の本心を置き去りにしないこと。
相手の本心も、奪わないこと。
違うままでいても、
関係が壊れずにいられること。
自分にも、誰かにも、
そこにいていい場所があること。
やさしさは、弱さではなく、
人が自分のままで生きていくための
静かな力なのだと思います。
言葉が先にあって、
場所が生まれました。
場所に人が集まり、
私の知らなかったことが、
たくさん起きました。
そして15年経った今も、
カフェコスモスが何を育んできたのか、
私はまだ、すべてを言葉にできてはいません。
ただ、ここで起きてきたことを
もう少し、よく見てみたい。
人と人のあいだに。
人と場のあいだに。
そして、自分の中に。
やさしさが解放される瞬間を。
15年前に生まれた言葉の続きを、
カフェコスモスは、
これからも生きながら探していきます。
カフェコスモス代表 近藤陽子(お〜にゃ〜)
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